*王国騎士団所属、勇者・・それは・・
王国騎士団の最強の精鋭に与えられる称号である。
現在は5名が承認されており、その中にあって勇者の中の勇者と呼ばれる男がいる。
*その男の名は、勇者レオン・・。 通常はこのように名の前に勇者の称号を
冠して呼称されるのであるが、彼の圧倒的な戦闘力を讃え他の勇者も含めて
彼のことをただ、勇者と呼ぶ者も多い。
そう彼こそ間違いなく現在、魔界最強の男、真の勇者なのである。
*そんな彼の今回の任務は、とある学園への潜入捜査である。
元々は彼が受け持つほどの高い難易度の任務では無い・・
いや、無かったはずであった。
しかし、この任務は・・ある・事件と情報をきっかけに
王国最強の戦闘力を投入するまでのものとなってしまったのだった・・。
*その情報をもたらしたのは、このふたり・・
勇者フローラと騎士ルナである。
ふたりは、とある学園に潜入調査を行っている。
*元々は実の姉妹の様に仲の良かったふたりであったが・・。
ある事情によって微妙な関係になってしまっていた・・。
フローラ
「ルナ、今日も18時に地下第3訓練場に集合ね。」
ルナ
「はぃ、フローラさん・・。
それでは、わたしは情報収集に向かいますので。」
*無感情に素っ気無くルナはそう答えて・・
さっさと歩き始めてしまった・・。
フローラ
「あっ、ちょっと・・ルナ・・。」
ルナ
「なんですか? フローラさん。」
*少し冷たく棘のある受け答えをするルナ・・。
フローラ
「いぇ、ごめんなさぃ・・何でもないわ・・。
それでは、また後で・・。」
*ルナの態度にフローラは少し悲しそうに表情を曇らせる・・。
フローラ
(はぁ~わたし・・やっぱりルナに嫌われてしまったみたぃ・・。
レオンとの事・・考え直した方がいぃのかしら・・。)
ルナ
(うわ・・フローラさん、落ち込んでる・・。
あぁーっ! わたし、なんて嫌な娘なんだろ・・。
フローラさんは、全然悪くないのに・・。)
ルナ
(だいたぃ、お兄ちゃんがいけないのよ・・。
フローラさんは、わたしの目標で大好きな先輩なのに・・。
いつの間にか婚約だなんて・・。)
ルナ
(はぁ~紹介するんじゃなかったなー。)
ルナ
(そりゃ~ね・・フローラさんは、後輩のわたしから見てもさ・・
美人だしかわいぃし・・優しくて・・頼りがぃがあって・・
なんと言っても女性ふたり目の勇者・・憧れの存在だよ・・。)
ルナ
(だからって・・婚約はないでしょっ!
わたしだって、お兄ちゃんのこと・・あーもぅっ!
どぅしたら、いぃの? この気持・・はぁ~とりあえず・・任務しなくちゃ・・。)
*ルナは生徒から、フローラは教官などの職員から
それぞれ情報を集めるために別行動となった。
【魔界での婚姻】
【この世界の魔族には遺伝的な悪影響は起こらないため
近親でも結婚は可能である。
なので、もちろん勇者レオンと妹ルナも結婚が可能であり
子作りも問題は無い。】
*その日の夕刻・・
ルナ
「ふぅ~ゴートゥーヘブンか・・。
早く状況を把握しなぃとまずいよね・・。
う~ん、何か見落としているのかな?。」
ルナ
「あっ! もぅこんな時間なんだ・・。
急いでフローラさんと合流しなぃと・・がっ!
なん・・で・・わたしが・・気配を感じられなかった・・なん・・て・・。」
*ルナは何者かに背後から襲われ意識を失ってしまった・・。
*ルナは優れた騎士でありこの時も周囲に気を配っていた。
にも関わらず、背後からの襲撃を許してしまったのだ・・。
要するに犯人はそれほどの手練であるということだ・・。
*その翌日・・
勇者
「失礼します、ギルバート様・・急用とのことですが、なにかあったのでか?。」
【勇者レオン 男:23歳:183cm 78kg】
【勇者の中の勇者。
現在魔界最強の男、王国に絶対の忠誠を誓う熱血漢。
当時史上最年少20歳で勇者となった。
両親が他界しているため学園入学前から
妹の面倒を見るために働いていた苦労人。
受験時、希望する第一ではなく第八の入学となった。
これは、身辺調査の結果なのであるが
本人は単純に学力不足だと認識している。
そのため、勇者では唯一の第八の卒業生である。
しかし実践においては当時から教官でさえも歯が立たない強者であった。
第八は飛び級で3年で主席卒業している。
公式戦及び、戦場では無敗だが
非公式な戦いでは勇者になる前に、二度の敗北を味わっている。
その相手はふたり共、現役の先輩勇者である。
騎士ルナは実妹、勇者フローラは婚約者である。
一応、フローラに対して一途なのではあるが・・
女性からの誘いは断れない。
根本的にかなりの女好きである。】
勇者ギルバート
「あぁ、レオン・・大変言いづらいのだが、落ち着いて聞いてくれ。」
【勇者ギルバート 男:38歳 190cm 82kg】
【レオンに初めて敗北を味あわせた現在最年長の勇者。
人格的にも武人としても人々から尊敬される王国の重鎮で
王国騎士隊の総隊長であり、レオンの憧れの存在である。
自らにも他人に対しても平等に非常に厳しい性格であり、
どんな些細な悪事も許さない。】
勇者
「はい・・。」
勇者ギルバート
「フローラとルナとの連絡が途絶えた・・。」
勇者
「えっ!? いや、ギルバート様・・御冗談を・・あのふたりに限って・・。」
勇者ギルバート
「昨日の17時の定期連絡の後、本日7時の定期連絡が無いのだ。
こちらからも再三連絡を試みているが・・音信不通の状態となっている・。」
勇者
「そんな・・今回のふたりの任務は第零への定期的な調査だったはずです・・。
特に危険など・・それに、フローラが任務に着いているのですよ・・?。」
勇者ギルバート
「わかっている、しかし・・
あの真面目なふたりから連絡が途絶えているんだ。」
勇者
「うっかり・・忘れてしまっているだけとか・・。」
勇者ギルバート
「ふたりともか?。」
勇者
「でもでも・・つい、ふたりで話し込んでしまって・・。」
勇者ギルバート
「落ち着けっ! レオンッ!! お前が、今取り乱してどうするのだ?。」
勇者
「うっ・・す、すみません・・。」
勇者ギルバート
「いや、謝罪の必要は無い。
これでも、お前の気持ちはわかっているつもりだ。」
勇者
「はい・・それで、この後どのようにするおつもりですか?。」
勇者ギルバート
「うん、もちろん至急後任を派遣して調査させるつもりだ。」
勇者
「なら、この私を・・。」
勇者ギルバート
「当然だ、その為にお前を呼んだのだからな。
行ってくれるな?。」
勇者
「はいっ! お任せください。 必ず無事にふたりを連れ、帰還します。」
勇者ギルバート
「うん、ただ気を付けてくれ・・。 フローラからの昨日の報告では、
学園がゴートゥーヘブンに関与している可能性が高いと連絡をしてきている。」
勇者
「ゴートゥーヘブン? あの魔薬のですか?。」
【ゴートゥーヘブン】
【開発者も精製方法も知られていない強力な魔薬で、
裏社会でかなりの高額で取引されている違法薬物である。
効果の方は、体内に取り込まれると異常なほどの性的及び、攻撃的な興奮症状を
引き起こすというものである。
ただ、これだけであれば通常の興奮剤と変わりは無い。
しかしゴートゥーヘブンには・・
苦痛を全く感じ無くなり、
攻撃力・防御力及び俊敏性も数倍になるという作用もあるのだ。
実際その効果は凄まじく、この状態になった者は
例え服用者が一般人であったとしても王宮騎士団員が十名以上で、
束になっても取り押さえることができなかったほどなのだ。
もちろんリスクも大きく、激しい中毒性により精神障害が発生し
体質によっては初回で、運が良くても数回の使用で廃人になってしまうのだ。
そんな危険な魔薬であるが、そのあまりにも強力な効果のため・・
大変残念なことではあるが、貴族の中には
軍事目的の使用を検討している者さえ存在し始めているのが現状である。】
勇者ギルバート
「そうだ・・ふたりは何かしらの大きな組織と接触してしまった可能性があるのだ。
ふたりの事もある、例えお前であっても何が起こるかわからない状況だ。
十分に注意して任務に当たってくれ・・。」
勇者
「かしこまりました。 それで、着任はいつになりますか?。」
勇者ギルバート
「一刻を争う可能性も否定できない。
準備が整い次第、本日中に頼む。」
勇者
「はい、ありがとうございますっ!。」
勇者
(直ぐに向かうから・・
頼む、どうかふたりとも・・無事でいてくれ・・。)
*レオンが何故この任務に志願したのか? それは・・
前任者のふたりが彼にとって掛け替えのない存在達であったからである。
*ひとりは名をフローラといい・・女性でありながら先日、
王国史上最年少で勇者として承認されたばかりの知勇兼備の女騎士である。
彼女は、その華奢で女性的な魅力溢れる肢体からは
想像も付かないほどの戦闘力を誇る強者で、同時に至高の宝玉と称される
王国のみならず魔界随一と誰もが認め憧れる絶世の美女でもあった。
そして、羨むべきは彼女はレオンの最愛の婚約者でもあるのだ。
【勇者フローラ 女:19歳 167cm 45kg 89(E)-53-87】
【史上最年少で、二人目の女性勇者となった。
至高の宝玉と称される魔界随一の美女。
淑やかで控えめな性格だが、その魅惑の肢体から溢れる色香は
どうしても周囲を魅了してしまう。
勇者レオンの婚約者。
第一学園時代からの後輩でもあるルナの才能を高く買っており
以前から目を掛けかわいがっている。
が・・最近ルナの態度が
よそよそしくなった事が気になっている。
第一は飛び級で2年で主席卒業している。】
*そしてもうひとりは、名をルナといい・・名門王宮付属第一高等士官学園を
本年主席で卒業後・・今年の春、
つい一月前にフローラの配下として配属されたばかりの
新人女騎士である。 彼女もまた、人懐っこい性格とその愛らしい外見もあって
あっという間に王宮のアイドル的存在となっていた。
そして、彼女は勇者の実の妹であった。
【女騎士ルナ 女:18歳 165cm 44kg 87(D)-55-88】
【勇者レオンの妹。
元気で明るく勇者レオンに兄以上の感情を秘めている。
兄には必要以上に甘えまくるが
実は真面目なしっかり者で、
名門第一を飛び級で主席卒業した才女である。
卒業後、憧れの兄の背を追い王宮の騎士として士官し
フローラの配下となった。
勇者フローラは憧れの存在で同性の騎士として大変尊敬している。
が・・大好きな兄を取られて内心はおもしろくない。】
*ふたり共、実力は申し分無いのだが・・
それぞれが現在の地位に着任したばかりとあって、ひとりは勇者として、
ひとりは騎士として経験を積むために
難易度の低めの任務が与えられたはずだった・・。
だが、思いも掛けない事態により彼女たちの消息は途絶えてしまったのだ・・。
*それでは今回、彼女たちが潜入捜査を行っていた第零学園とは・・
王国にあってどのような位置付けなのであろうか。
*まず重要なことは、王宮において高位の士官を目指す場合、
第一~第八の王宮付属高等士官学園を卒業するのが必須となっていることである。
各校もランク付けされており、最も入学に対し難関なのが第一となる。
第一の入学許可を受けるには戦闘力、軍略などは当然として・・
一般の学力及び、現在の家族の素行調査までされる厳しいものである。
例え貴族の出であったとしても現在功績を上げられていない没落貴族などの
家系ではまず入学は許可されない。
*受験した者の上位から順に第一、第二、第三・・第八と
振り分けられていくのであるが第一の出身者が必ずしも高官に昇る訳ではない。
着任後は完全な実力主義でその実績で昇格は決定される。
ただ元々特に優秀な者が多いため、
第一出身者の高級士官が最も多いのは事実である。
例として勇者レオンは一般家系の出身であるため
本人がどれほど優れていようが第一の入学は認められなかった。
しかし、妹のルナはレオンが勇者となった後の受験であったため
文句無く第一の入学が承認されたのである。
もちろん、これらの選考結果は公表されないため
レオン事態は、単純に己の学力の問題だと思っている。
*なのでこれらの八学園は、
一般的に受験をし認められた者だけが入学が許可されるのである。
しかし、王宮付属第零高等士官学園は、立ち位置が大きく異なっていた。
それは、第零は犯罪者となった若者の更生目的のために
設立された学び舎だからである。
*このようにある程度リスクを伴う第零であるが、
今回は特に危険度の高い事態となっているようなのだ。
それは、謎に包まれた魔薬ゴートゥーヘブンが
ここで製造されているとの報告が入ったからだ。
*果たして、勇者レオンはふたりを無事救出して
ゴートゥーヘブンの謎の解明ができるのであろうか?
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